2016年11月24日木曜日

引っ越し予定

ご無沙汰しておりました。

さて、この数年で小生を取り巻く環境が大きく変わった為、来年度より新しいブログを作成する予定です。

ここでやり残した事を残り僅かな間で済ますつもりです。

ころからもよろしくおねがいしたします。

フェイス

2012年8月16日木曜日

『ダークナイト・ライジング』


@凡作

完成度(荒の少なさ)に関して言えば『ダークナイト』には劣っている上に、荒唐無稽でいちいち回りくどい物語展開、所謂どんでん返しの致命的な失敗。

どの点から見ても粗雑大量生産のジェットコースタームービーに成り下がっている。いや、クリストファー・ノーラン監督はむしろこの手のジェットコースタームービーを撮れない監督と見られていたのである意味で新境地という言葉も使える。

結果として三部作とも、テーマもタッチも異なる三部作となってしまった。
第一作『ビギンズ』では、SF要素を汲んだバットマンの誕生譚。
第二作『ダークナイト』では、SF要素は薄くなり犯罪映画としてのジョーカーの再構築。
第三作『ライジング』では……ただひたすら観客の裏をかくことばかりに集中したディザスタームービーだ。

言うまでもなく本作はアメコミの実写化だ。ディザスター=ヴィランのベイン。ジョーカーとは異なりバットマンを倒すために比較的最近に描かれた古今の悪役の最小公約数としての魅力はこの映画においても十分である。
ジョーカーの時と同様に、原作から大幅にデザインが変更され論争の的となったベインはWWEのステロイド使用の悪役レスラーのような原作のデザインからMMAのファイターのような潤滑剤としての適度な体脂肪も備える肉体をトム・ハーディーは肉体改造を経て演じた。
前作におけるジョーカーはピエロからロックスターに改変された為、ジョーカーにとってはとても重要なウザさとかキモさの要素が薄かったので「カッコいいけどちょっと違くない?」と筆者の脳内で素晴らしい悪役である一方でジョーカーと認められない葛藤で右往左往する事となる。
だが今回の改変はキャラクターを時代背景に合わせた英断だった。静止画でこそ似ても似つかないベインであったがフィルムの上では「実際にベインがいたらまさにコレだ」と納得できるほどの実写化を果たしている。
個人的には前作のジョーカーよりも好きだ。っていうか咄嗟のユーモアや部下の扱い、人質の使い方などジョーカー以上にジョークがキツイ。

以上の怪物ベインの引き起こす“バットマンを苦しめる為のゴッサム・シティ壊滅計画”意味不明すぎて混迷の一途を極めることとなる。
結果として主人公のブルース・ウェイン=バットマンがストーリーからについて行けず置いてきぼりになっている。
その為、遅れから追いつくべく劇中で2度(観ようによっては3度)あるバットマンの復活がいずれもカラッと流されてしまっている。
ダークナイト・ライジング=立ち上がれ!バットマン!の意なんだけど、このカタルシスの無さはがっかりせざるを得ない。

“バットマンを苦しめる為のゴッサム・シティ壊滅計画”には『ダークナイト』でジョーカーに勝利したものの、警官権力を暴走させた“デント法”の為に格差が広がったゴッサム市民を暴徒に代えてバットマンを苦しめようともするのだが、
肝心の暴徒化する市民の描写が少なすぎる。むしろベイン率いる囚人部隊に怯えて引きこもっている描写の方が圧倒的に多いのでどうみてもベインの試みが失敗しているようにしか見えない。
“主人公を殺す為だけの暴走族連合”作った『スーパー・マグナム』でももっと暴徒化した市民の混乱を上手く描いてたぞ!

“バットマンを苦しめる為のゴッサム・シティ壊滅計画”は序盤のゴッサム爆発しろ(物理)は意味不明で唐突な場面が多いのだがなんだかんだで成功して勢いがあるので「ベインだからできたのかなー」と観客を騙せたんだけど、
ゴッサムのリア充爆発しろ(精神)の所で失敗されたもんだから「やっぱだめじゃんベイン」と、終盤の失速を許す事になってしまう。おまけに不要などんでん返し付きだった。

一方でアン・ハサウェイが演じたキャットウーマンは正ヒロインの役目を十分に果たした。『リターンズ』のミシェル・ファイファーのはSMの女王様とヤンデレが入っててキャラの立ちこそ凄まじかったが、この度は無事に健康的なお色気を振り撒くツンデレさんになっている。ジョーカーとかモルとかヤンデレ大好きなクリストファー・ノーランの前科を考えるとキャットウーマンマジ天使でした。ありがとございました。

ノーラン版バットマンシリーズの総評として文句言いたいのはバットマンが弱すぎるのである。
『ビギンズ』はまぁ誕生譚だから仕方ない。『ダークナイト』では不殺生ゆえにジョーカーに苦しめられるが最後はゴッサム・シティの市民と共に倒した。
『ライジング』ではゴッサム・シティが丸ごと人質に取られているので不殺生もあっさりと捨てているんだけど……バットマンって正統派ヒーローの志す不殺生とまた違っているんだよね。
基本、卑怯な手段で戦っている人だ。暴虐なギャングやマフィアを相手に悪魔の如き狡猾な頭脳で戦ってる。彼の不殺生は自らがギャングやマフィアと同じレベルに落ちない為の枷であり、ギャングやマフィアよりも頭が回るから実現できているんだよ。ギャングやマフィアと同じレベルに立たないから持つことができた悪魔の頭脳をもって戦うんだよ。
ノーランはそこをおざなりにしてしまい“不殺生のせいで無理している”ように描いている。
さっきも『スーパー・マグナム』のタイトルを出したけど、デス・ウィッシュシリーズは「殺すことで無理している」ポール・カージーが2作目のラストと3作目以降の妖怪弾幕ジジイと化して強くなったカタルシスがあったんだけど、
ノーランのバットマンは最後まで「不殺生のせいで無理している」ままだったのが納得出来ない。『ビギンズ』のラスト、『ダークナイト』のラストなどでは「不殺生でも頑張れる」ような希望のあるラストを毎回だしておいて、
『ライジング』において「不殺生さえ破れば実力はこんなもんだぜ(ドヤ)」ってのはほんとに「ノーランあんたバットマンの事本当はそんなに好きじゃないんじゃないの?」って話になる。

そもそも正体が頻繁にバレている。劇中で「怪しいと思っていた」「ああブルースの“お友達”ね」「あっそうか、ブルースぐらいの金持ちなら納得だ」とかそら引退を考えるわ!

一方で毎回批判されているアクションシーンだけど、おれはアリなんだよね。『仁義なき戦い』みたいな無茶苦茶なカメラワークとかシンプルなしばき合いとか撃ち合いとか、CGの無いころの雄臭いやり方が好きなんだよ。
カサンドラ獄中記の加藤ヨシキさんは本作を「マイケルベイがギャグでやる事を真面目にやっている」と評されたが、オレは逆で「マイケルベイがチャラチャラしている所を硬派一直線でやりぬいた」と評価したい。
マイケル・ベイは好きだけど、ノーランのやり方も好きなんです。

正味、バットマンとしては『バットマン・フォーエバー』と同じぐらい、SF要素としては『ゴジラVSキングギドラ』と同じぐらいドリトスと炭酸水の進む見てて楽しい映画でした。

・二回目鑑賞後(ネタバレにつき反転)

つーか、この映画ラーズ・アル・グールいらなくね?

原作どうりで「バットマンより優れた存在である事を証明する為」というマッチョイズム全開のベインの方が映画の荒少なくね?

つーかタリアいらなくね?

タリアのせいでこの映画、ノーランバットマン完結編というよりも「童貞こじらせたロリコンのマスク男が非リア主張する金持ちのクリスチャン・ベールをボコボコにする」という

ノーラン版『革命戦士 犬童貞男』じゃねーかよ!後半の失速具合まで完全実写化だよ!

本作のベイン先生とタリア嬢の経歴を並べるとこんな感じになっただよ!

ロリア「ママ~ママ~(涙)」
べイン「ボーイッシュ美少女キタコレ!俺の時代きたよこれ!ロリアちゃんはボクが守る!」

ロルア「ベイン!ベイン!助けにきたよ!」
べイン「タリアちゃんまじ天使」

ラーズ「ベイン君だったよねー、悪いけど娘に付きまとうのはやめてくんないかなー、娘はリア充イケメンの大金持ちを婿入りさせたいんだよー。時代はガン=カタですよガン=カタ」
ベイン「リア充爆発しろ!」

ラーズ「私が爆発しました」
タリア「え?」
ベイン「え?」

ベイン「こうなったらお父様とバットマンを超えてタリアちゃんとトゥルーエンド目指す」

ビッチ「バットマンwwwベッドの上じゃマジアメリカンサイコwwwつーか体の相性マジガン=カタwww」
べイン「」

ビッチ「ブルース……守れなかったゴッサムと市民と同じ炎で焼けしになさぁい。乳酸菌とってるぅ?つーかこれヤンデレ?マジオタクwwwウチきめぇwww」
ベイン「」
ビッチ「ベイン。得意のキモさでブルース逃げないように焼き入れといて。ばいばい」

ベイン「バットマン爆発しろ!」※ベインが爆発しました

なんなんだよこいつは……

『スパイダーマン』のMJだってここまでビッチじゃねーよ!

かわいそうだろ!ベインかわいそうだろ!謝れよ!ベインに謝れよ!このビッチ!オレが指を一本ずつ圧し折ってやるからその間祈るように謝れよ!ビッチ!
トム・ハーディーにも謝れよ!ジョーカー以上のヴィランから犬童貞男にされたトムに謝れよ!ビッチ!
悪バレした時も明らかにメイク変わってるじゃねーかよ!ビッチ!
なんだよーなんなんだよービッチはなー童貞狩りをしてアヘ顔Wピース晒すから神ビッチなんでしょーがー
MJといいタリアといいそんなビッチはいらないよー
ジェイソンさーんフレディーさーんここでーすここにビッチがいーまーすー
ムカデ人間の真ん中にされちまえービッチー

2012年5月5日土曜日

学園黙示録 ハイスクール・オブ・ザ・デッドのDVDのオマケ


いつもあのテンションで頑張ったら『最低映画館』超えられるレベルのレビューサイトに変貌できるんだけどソレは無理だ。俺はド素人だ。学園黙示録級の駄作だからこそあんなレビューが書けた。

あのね、DVDが出た時にね特典ついてたらしいねん。知らんけど。
もう、ぶっちゃけると違法配信を流し観していたんですわ。その特典。

なんかね、舞台は島。漠然と島。

もうゾンビすら出てこないの。無様な奇乳を水着で丁重に隠していちゃいいちゃして終了の15分コース。

これさー『ゾンビ99』だよね。『ゾンビ99』だよね?

21世紀に入ってイタリアンゾンビ物以下の超絶駄作の特典映像が『ゾンビ99』の無承諾リメイクとかなんですか?斜め上過ぎますよ?

なめてんの?
萌えろと?
これでヌケと?
死ぬがよい?
死ぬがよいですか?

こんなもんもうアレだ、『淫妖蟲』のキャラじゃねーと耐えられないよ、学園黙示録見ながら「駄作!駄作でイクーーー!ひぎぃぃぃ!んほぉぉぉ!びょぉぉぉ!」とかアヘ顔で母乳出すわウジ虫産むわ子宮出すわ好き勝手絶頂して―ワタシの視界は暗転した―

いよいよもって柿ノ本歌麿の輪姦漫画に「学園黙示録を見せる」という責めが拝めますよ。
氏賀Y太は洒落にならないと判断してやらない。

そんでコミケには「学園黙示録をアスカに見せる」という情け容赦ない薄い本が惣流版と式波版で出まわりますよドSはアスカ大好きだから。「アスカ物理的に爆発しろ」だから。

いうなれば『鬼畜王ランス』でメナドたんが輪姦されて頭かち割られ惨殺されるテキストでヌクというレベルのサディスト野郎の責具が学園黙示録なのです。

もし貴方の彼氏彼女が学園黙示録を勧めてきたらもうマトモなSEXでは満足できない身体にされてしまうのです。別れることをおすすめします。

むしろ駄作なので観ること自体が悪魔の実験と称される『ギニーピッグ 悪魔の実験』の特別完全版みたいなのが出たら
「殴」「蹴」「抓」「回」「音」「剥」「焼」「虫」「学園黙示録を見せる」「刺」
で、ラストの眼球串刺しは学園黙示録をみた不細工が「もう耐えられない目を潰して!」って発狂したから串刺しにしたという悲しい悲しいエピソードが発覚するのだ。

セガールとチャック・ノリスすら「トゲトゲのチンピラナイフを装備しない」「学園黙示録を見ない」の二つを守って最強を維持してるのですわ。
ドルフ・ラングレンの来日の真の理由は学園黙示録に挑戦する為だったのでしょう。しかし極真会館の一同が全力で止めたという感動のエピソードがあるにちがいない。

ええ、こんな学園黙示録よりオモロないのは第一作と第二作をむりやりくっつけた伝説の金曜ロードショー編集版『トワイライト』ぐらいのもんですわ。それでもやや劣るというレベル。

次に西成区で暴動が起こるのは『朝のこども劇場』で学園黙示録が再放送された時。
ウィキペディアに第25次西成暴動―――日雇い労働者が見た朝のアニメのつまらなさを発端とする暴動 とか書かれればいい

というか平野耕太先生はさっさと『進め!聖学電脳研究部』の寺門兄弟が学園黙示録の世界で無双してガーゴイルとかムスカとかなりたいようになればいい。

2012年4月3日火曜日

【二次創作】バイオハザード:レクイエム・フォー・タイラント -Resident Evil : The Last One-



2002年4月20日 シカゴーーー某金融機関VIPルーム

スクリーンには青い目出しの頭巾を被った、男とも女とも判別しがたい背格好のスーツ姿の人間が政治家の演説台に似せた舞台でおしゃべりを始める様がプロジェクターから投影されていた。
映像は、2001年3月2日にインターネット配信された、あるテロリストの犯行声明である。

『聴衆諸君、私は同胞たちからはジェネラルと呼ばれている。事実、反アンブレラ主義者支援団体エンパイアーズの将軍職として実働部隊の指揮を執り行っている』

まるで軍歌を歌っているかのような勇ましい男性の声だが、変声期の可能性もある。画面はヘリコプターからの空撮映像へと切り替わった。惨劇の舞台。ベルリンの上空から。

『本日2001年3月2日、ベルリン裁判所へと護送されていたアンブレラヨーロッパ支部の営業所の広報部長……裏の顔は中東へのBOWの密売調定人、ヴォイジャー・ハインバルを拉致したのは我々だ』

覆面の怪人のナレーションをバックに、AK47で武装した総勢100人近いテロリストが明らかにアンブレラとは無関係の市民を虐殺してまわり、元アンブレラ社の幹部を護送トラックから引きずり出す一部始終がこの映像には収められている。
上空から映し出される市民への容赦無い銃撃は酸鼻極まるものであり、中でも画面の右端で胸ポケットに爆発物をねじ込まれた少年が逃げまわった末に路上で粉微塵になる場面からみても明らかにテロリストは殺戮を楽しんでいる有様であった。

『無関係の人間が大勢死んだと思うか?いいや、違う。我々の目的はそう、アンブレラの武力による“虐殺を経て”の廃滅なのだから』

「手こずった為に云々」「大義の為に云々」「正義を成す云々」などテロリスト社会特有の社交辞令的文面は無く、覆面の怪人はこの恐怖のビデオレターにて、単刀直入に虐殺を認めた。

次に覆面の怪人は懐から円柱形の錠剤の入れ物を取り出した。一見なんの変哲もない。が、ラベルには禍々しい傘のマークがあった。

『このアスピリン、アンブレラの製品だ。痛みを抑えるための薬。人類が、他人の痛みにも自分自身の痛みにも無頓着になりすぎた結果がラクーンシティーの悲劇だ!』

巨大製薬会社の暴走を見逃した人々の欺瞞をこの映像が初めて嘲笑った。

『此度、我々の戦果となったドイツ市民も聴衆諸君もラクーンシティーの悲劇までアンブレラの製品を購入し加担していた消費者だ。聴衆諸君の動かす世界はアンブレラを法の裁きにて処刑することを正義として、我々の行いはテロルとして処刑と見なさ無いのだろう?だが、違う、我々エンパイアーズは違うのだ。聴衆諸君……アンブレラに親や子を、愛する者をゾンビに変えられゾンビに喰われ、BOWに引き裂かれた故に咽び泣いた遺族たちの叫びに耳を貸さなかった聴衆諸君よ。貴様らが正義なら、我々は悪だ。アンブレラと同じ悪で、ある。そう今こそ悪には悪の鉄槌を!悪には悪の救済を!』

スクリーンは暗転した映像を暫く拾っていたが、間もなく「ビデオ信号がありません」と青い画面が投影された。

「……『GIジョー』のコブラコマンダーかよ。アンブレラどものギークセンスを笑えねぇな」暗室で男がスクリーンの中にいた覆面の怪人に対して履いて捨てるように言った。

プロジェクターを観ていたのは私立探偵のアーク・トンプソン。かつてアンブレラの企業城下町となっていたシーナ島で発生した人々をゾンビに変貌させてしまうTウィルスの汚染によるバイオハザードから生還した男だ。
彼はこの銀行のVIPルームでアメリカ大統領直属のエージェント、レオン・S・ケネディの招致により彼と密会を行なっていた。
レオンもラクーンシティーでアンブレラがシーナ島に先立って引き起こしたTウィルスによるバイオハザードの生存者である。
この二人は元々旧知の間柄であったがシーナ島の事件以来、直接会うのは4年ぶりである。

「エンパイアーズを名乗る反アンブレラを掲げるテロリスト、1999年末から活動を開始、2001年にインターネットでその存在を公言した」
「いまさらこんな物をみせてどうするんだ?俺の家にだってインターネットはつながる」
「実は、いま見てもらったのはインターネットに流れているものと違う。もぬけの殻だったエンパイアーズのアジトに運良く残されていた原版だ」

レオンはもう一度プロジェクターを再生した。

「もう一度ここを見てくれ。ジェネラルの後ろに一人、大男が控えているだろう?」

画面左奥にはトレンチコートらしいものを身につけた男の姿があった。暗がりでよく見えないが、周囲の物と比較するに身長は2mを超えている。

「こいつはよく覚えている……と、いうよりも忘れられん。T-103……通称、」
「量産型タイラント。かつてラクーンシティー、そして君が戦ったシーナ島で量産された生物兵器。アンブレラが実戦投入を果たした史上初のBOWだ。」
「2000年には全滅したがな。なにより、運用効率と製造リスクの点からハンターにとって変わられた。まさか生き残りがいたとは」
「タイラントだけではない」

レオンはトンプソンに一枚の写真を渡した。

写真に写っていたのは、皮膚病らしき腐食で全身の皮膚が穴だらけで筋繊維が露出し、頭蓋骨の隙間と眼孔から肥大した脳みそがはみ出し、棘の付いた棍棒のようになった肉塊のような四肢を持つ元は人間だったと思われるグロテスクな奇形体の死骸であった。

「リッカー?……になりかけだった元人間か?」
「そうなのだが、こいつはもともと、Tウィルスに感染したゾンビの成れの果てだ。ところがこの個体を発見した地域ではTウィルスの汚染は確認されなかった。この個体を調べたところ、2001年から行方不明になっていた元アンブレラ協力会社の清掃員のDNAと一致した」
「つまり人造のリッカー」
「その他にも人為的に蜘蛛やネズミ、爬虫類にTウイルスを投与してそれらのリッカーのような変異体製造の実験を行なっている形跡がアジト跡に残されていた資料で分かった。どうやら連中にはアンブレラのような複雑な遺伝子操作技術が無い代わりにTウィルスだけでBOWを作ろうとしている」
「まさか、あいつらは、アンブレラのTウィルスとBOWでアンブレラを討つと考えているのか?」
「テロリストによるバイオハザード。絶対に防がねばならない。たとえ標的があの死の商人であったとしてもだ」

ここでレオンが本題に入る。

「君への依頼は、現在このシカゴに潜伏していると思われるエンパイアーズの事実上の最高権力者“ジェネラル”の所在とエンパイアーズの人体実験場を発見することだ」
「なぁ、レオンよ。この件で脅威にさらされているのはアンブレラだけではない。テロリストどものアジトの環境でも容易に製造できるBOW、培養の水槽も要らない。檻だけで飼えるようなものが完成すれば、AKライフルや地雷のように世界中に分布してしまう……これも阻止しなければならない重大任務に民間である俺を雇う理由は?」
「公的機関の人間はアンブレラ派地下組織の持つブラックリストに入っている可能性がある。このリストが既にエンパイアーズの手にも渡っている。斥候として役に立たない。何よりも君が俺にとって一番信頼に足りる人格と実力を併せ持った人の一人だからだ。俺の数少ない友人であるし、何の援助もなくバイオハーザード発生地域から子供を二人もつれて脱出した実績を持つ人間は残念ながら君しかいない」
「つまり俺は斥候に徹すれば良い訳だな。何か解れば君に逐一報告する。だが、かつてのアンブレラのような巨大企業なら入り込める隙はあるが、相手はテロリストだ裏と表の隙間がない。期待ハズレにならなきゃいいが」
「君の腕は信用しているが後二人、既にこの街で調査を開始している。それぞれがそれぞれの方法でだ」

トンプソンには「探偵」のコードネームが、既にシカゴを調査中の二人は「バイカー」と「郵便屋」のコードネームが与えられていた。
3人での会合は基本禁止とし、後日レオンの指示で別々に顔合わせをするという手はずとなっている。
この3人は調査情報のやり取りを禁止されており、3人の情報はレオンの所属するホワイトハウスの司令部に統括される。
司令部は3人それぞれに必要かつ提供しても良い範囲の情報とその後の活動指針を電子メールで配信する。
これは、3者それぞれ独自の捜索による成果を期待する故の、独自性を保つための配慮であると同時に、3人で固まった方針で動けばエンパイアーズに動きを感づかれる危険性を回避するためである。
最初の顔合わせは有事の際の保険であるとレオンは説明した。
わざわざ3人を分け隔てる事を徹底している点に「ホワイトハウスの陰謀」らしいものを感じたトンプソンだったが、深入りは無用と詳しく追求することはなかった。

「俺達が、ジェネラルと実験施設を発見した後の守備は?」
「お俺の所属しているような合衆国政府とは違う“別の組織”が制圧に取り掛かる。当然、その詳細は明かせない」
「報酬は?」
「前金で5万ドル。成功報酬についてはジェネラルとエンパイアーズの施設制圧後、協議の後に配当する」
「……引き受けた」

トンプソンの返事にレオンは決意を新たに、最新型のブラックベリーをトンプソンに手渡した。
シカゴでの調査期間中、ホワイトハウス司令部と通信ができる特別の端末である一方で、ホワイトハウスと常に何らかの通信を行う“監視役”でもある。

「君は引き受けると信じていた。もう既にシーナ島の時と同じ口座に振り込んである。この後ロビーのATMで調べてみるがいい」

トンプソンはレオンに別れを告げ、地下のVIPルームを去ると、1階のATMから早速2000ドルを引き出してシカゴの街へと繰り出した。

2012年3月20日火曜日

【二次創作】バイオハザード:レクイエム・フォー・タイラント -Resident Evil : The Last One-



2000年12月31日 ニューヨーク

エンド・オブ・センチュリー・パレードの歓声の中に、かき消された女の悲鳴があった。

「やめて!私はもうアンブレラと手を切ったのよ!」

メインストリートの裏手からさらに入り込んだ改築中の雑居ビルの屋上で、女は分厚い緑のロングコートを羽織った大男に首を掴まれていた。大男は左手一本で屋上の防水塗料の盛られて間もないベタベタとした床から女の体を浮かせていた。
この大男はスキンヘッドに石像のような灰色の肌をもち、瞳のない淀んだ白い目を女に向けている。
大男のそばには、目出しの青い頭巾を被った黒いスーツ姿の小柄な人影があった。

「切る、か」

この一声の後に、大男は右腕で女の左の手首を掴み、すぐさま左腕を女の左肩へと移した。
大男は、華奢のな女の左腕を雑巾を絞るようにねじり始めた。
力任せの無造作に。しかし、ゆっくりと。
ミリミリ、バキバキ、ぶちぶち、と等間隔で皮が、骨が、筋繊維が、神経がねじ切れず腕の組織に絡み合ったまま、完全に生きたままの状態を保って腕全体が螺旋を描けど歪になり爆ぜていった。

腕じゅうから溢れでた激痛が彼女の全身を支配した、この時、激痛だけが彼女の世界の全てとなっていた。華奢な体から発せられる獣の呪いを込めるような断末魔に似た悲鳴も、遠い遠い彼女の世界には届かない。

ちょうど、最初に外れた肘関節が裂けると、大量の血液がはち切れて女の着ていた白のダウンジャケットを内側から赤く染めていった。
溢れでた血は、ジャケットを表まで染める前に、袖の内側から、ちょうど腋のあたりから溢れ出ると、床の乾ききってない防水塗料と混ざっていった。

グレーの塗料に赤い血が滲む床、そこへと覆面の人影が寄ってきた。

「切るとは、関心できんな。肉を潰し骨を砕いて末端神経にアテンションせぬば痛みには遠い。まして末端神経を切り落とすとは。貴様らは痛みを避けすぎている」

覆面の人影はバタフライナイフを振り出すと、ダウンジャケットとセーターとシャツの左の袖を、大男が握ったままの状態で器用にも切り裂き、滅茶苦茶にされた女の腕を剥き出しにした。
自分の腕のグロテスク極まりない有様をみて女は悲鳴で潰した自分の声で「いやだ、いやだ」とわめきちらす。

白人女性の腕は既に赤色と茶色と紫色の混沌とした世界に侵略しつくされていた。否、侵略すら生ぬるい蹂躙という言葉がふさわしい光景(ありさま)だった。
大男に強く握られた、手首から指先までが陶磁のような美しい白い肌を保っていた。

大男は女の腕に潰れていない場所が無いことを確認するように眺めた後、女の砕けた肩を掴んでいた左手を、女の左足へと移し、右手を離して女を逆さ吊りに持ち上げた。

「た、助けて!助け……て!」

一連の顛末で出し尽くされた悲鳴も、このか細い壊れた声も100年祭の乱痴気騒ぎの歓声の中では霞んで消えていた。

「助けて……そう、これは救済だ。痛みを忘れたお前らは、苦痛の中で死ぬことが幸い」

大男は女の体をムチのように振り回し床に叩きつけた。すぐには死なないように加減して。大男の右に、左に、何度となく女性の体をムチのように叩きつけた。
やがて全身の骨が砕け、遂には頭蓋骨が陥没した。だが彼女には息があった。大男は女の体の同じ箇所をなるべく打ち付けないように工夫していた為である。全身に痛みをしかし、一点だけ例外となっていた箇所があった。
横たわる彼女をムチのように振るおうとした時、彼女の体が膝から抜け落ちた。
大男は、空振りした女の左足を床に捨てると、カタワになった女の髪の毛を掴み上げる。右の目玉がぶら下がり、左の目玉は既にどこかに飛んで無くなっていた彼女が、多分次の一撃でもう動かないと大男は悟る。
すると大男は脇道に見える改築作業時の廃棄物を捨てるバケットへと、まるで壊れたおもちゃを捨てるように虫の息となった女を屋上から放り投げた。

朦朧する意思故に気絶する頃すら許されず落下した彼女は、バケットの中でそそり立っていた古い下水管に下腹部を貫かれて遂に死を許された。

巨漢が獲物の息の根を止めるて間もなく上空からヘリコプターが現れると、大男と覆面の人の立つ屋上に向けて縄梯子が下ろされた。

二人がてきぱきと慣れた身のこなしで揺れる縄梯子を登ると、そそくさとヘリは惨殺現場から離れていった。

ヘリコプターの後部座席で、覆面から覗く瞳と大男の白い目が、数十秒後に世界が変わる信じている大衆に憎悪の炎を注いでいた。

間もなく打ち上げられた花火からは「Welcome to 21st Century」の文字。街の灯りで照らされてる夜空の上でより一層きらびやかに花火は輝いた。

街から離れていくヘリコプターの中は花火の光により一層、影が強くなった。その影の中から、暗黒の決意が放たれた。

「21世紀から人間どもは痛みを思い出すことができる。俺と、俺に付き従う痛みを思い出そうと、牙を研ぎなおした獣ども……“エンパイアーズ”によって」

2011年9月25日日曜日

森光蘭

手段の為に目的を選ばなかった男モンティナマックス(HELLSING)
初恋を成就させるために対象も手段も選ばなかった男フェイスレス(からくりサーカス)

そして欲望を満たす為には目的も手段も選ばなかった男がいた。




当場作品『烈火の炎』


知力………7(機転・5 計画・2)「ずば抜けた直感力があり、機転に割り振らせていただいた」
学力………4(文系・2 理系・2)
技能………4(アナログ・2 デジタル・2)
武力………2(武器・1 格闘・1)「但し終盤では不老不死の怪物となり、完全無欠の強さを得る」
生命力……10(肉体・5 精神・5)「最強の魔導具、天堂地獄の防衛結界に生身で乱入し腕をなくしてもなお動き回る意外なタフさと、天堂地獄に取り込まれるどころか逆に取り込んでしまう精神力」
政治力……10(指導・5 交渉・5)「狂人だらけの暗殺集団を意のままに操る。愛憎さえも」
権力………10(地位・5 影響力・5)「日本の黒幕であるとされるがバトル漫画であるためどの程度の規模かは不明」
性質………10(度胸・5 冷酷・5)「鬼畜そのものの人格はすべてが欲望を満たす為が故の狂気である」
ルックス……0(美しさ・0 怖さ・0)
カリスマ……0(オーラ・0 威圧感・0)
ポリシー……10(信念・5 野望・5)「あくなき欲望を割り振らせていただいたがそうなると実質測定不能」
運…………10(チャンス・5 ピンチ・5)「主人公らと同等の補正がかかっている」

総合能力値 67~77(A)


表向きは慈善事業を展開するCOCOM財団の総帥。
その実態は戦国時代の火影忍軍の武器“魔導具”で武装した内外の暗殺部隊による武力支配で日本の裏社会の頂点に君臨する男。
本能寺の変で行方不明となった森蘭丸の子孫である事が暗示されており、代々伝わった古文書の類が火影忍軍と魔導具の情報元としていたと思われる。

永遠に欲望を満たし続けたいと考え、不老不死に執着。治癒の少女こと柳を執拗に狙う。(彼女自身に彼を不老不死にする能力は無いのだが、人体実験を経てその治癒の力を手に入れようと考えていたようである)

最強の魔導具、天堂地獄の所在を解読すると直属の暗殺部隊「麗」の首領であり自らが殺人マシンに育てた義理の息子、紅麗が謀反を起こす前に始末する。

そして天堂地獄を体内に取り込んでしまうと、今度は治癒の少女、柳を取り込むべく拉致。これに挑む主人公・烈火とその仲間たちに最強の暗殺部隊「裏麗」を指揮し待ち構える。

以上、その姿は唯只管に醜悪、醜悪、醜悪
喉が乾いて紙パックのジュースをチューチュー吸う超単純な生理的欲求を満たす姿さえ見てて気分が悪くなるという有様だ。

欲望を絶やさない為に不老不死という荒唐無稽に執着し、怪物として欲望を満たし続ける事に一切の躊躇のない。
その実、本人は何も考えていいない。考える事は欲望を満たすことの妨げでしかない。考える事を止めていた段階でもはや彼はバケモノだったのだ。
そう、彼は悪魔に魂を売ったのではない、彼の魂そのもが悪魔なのだ。
そして終盤こそ、肉体がようやく彼の欲望に追いついたのである。

こんな性格最低な男なのだが一方で彼は、作中で舌戦において負けた事がない。というのも登場人物全員が彼に半端ではない憎悪を燃やしており、彼の前では理性が働かなくなっている。己が理性が無い事に留まらず、他人の理性まで奪ってしまう。慣れない憎悪を伴って正義の味方が口汚く罵った所で、悪そのものである光蘭の悪態のボキャブラリーに敵う訳がないのだ。

安西信行は悪役おも魅力的に(悪く言えば腐女子から人気)描いている一方で「読者の全てに憎まれる漫画史上最悪の悪役を作りたかった」と語っている。
それ故の作中の人気キャラ紅麗を嬲り殺しにしようとする彼の姿は白眉。反響は凄まじくあまりのことに単行本表紙で彼を描くことは自重したという。

彼の邪悪な魂がまだどこかで生きているのならば、安西先生には『森光蘭の野望の王国』みたいな物を漫画ゴラクあたりで描いてみてもらいたいものである。

2011年4月9日土曜日

人肉ラーメン

@名作


『八仙飯店之人肉饅頭』以降、カニバルホラーというジャンルは露骨なグロ描写とホラーというよりはバイオレンス映画のような破壊衝動が画面を覆う傾向となっていた。

(単純に香港映画がホラーを苦手としている可能性もあるが・・・)

本作はその点、ホラー映画としてのおどろおどろしさに回帰している。もはやバイオレンスに逃げた人肉饅頭を叱咤するかのように乾いた暴力を排している。

オープニングで、人間がラーメンのスープに浸されるが、この段階ではさりとて凶悪なグロ・ゴア描写は無いのだがしかし、ただただ食材と扱われる成人男性の遺体は強烈なおぞましさだ。

かつ、本編冒頭から人のモツが入ったラーメンや吐き気を催す激痛の描写は筆者が長らく見てきたスプラッター描写の中でも上位に食い込む。

凶行に走るのがパッと見でギリギリ美人の分類な太めの中年のオバサンなのだが、虐待の過去や夫の家庭内暴力、そして人肉ラーメンを作り続けてきた異常者である姑の母権等に精神を病んでいる。本作ではその悲惨な生い立ちがコレでもかと時系列バラバラにモノローグ的に挿入される。
映画はこの凶悪な殺人鬼の悲しみを軸に展開されていく事となり、彼女は悲しみを深める度々に人肉を詰んだラーメンの屋台を引っ張ってあくせくと働く。

太めの中年女性を主人公に据えたこのアプローチは『死霊の罠2―ヒデキ―』を彷彿とさせているが、シュールの領域に突入してしまった『死霊~』よりも飽くまで現実感を優先した本作に軍配が上がる。

残念ながら主人公以外のキャラクターがとても薄い事と、凶行が露呈する場面においてそれまでの凶行は観客が把握し尽くしていた為にあまり恐怖心を煽らなかったり、終盤で主人公の狂乱する場面もフィルム効果を使い過ぎていてブツ切りの印象になったりといった欠点も抱えているが、久しぶりに上質のスプラッターホラーが、タイという映画産業としての注目度が高まりつつある機運の時に発表されたことを私は素晴らしいことだと思っている。

最後の最後で鬼畜の親玉である姑の家に逃げこみ、何故か少女の頃の姿で微笑み返すロジックにまみれたラストも好印象であった。